不動産売却で贈与税がかかる?親族間売買や「みなし贈与」の注意点を徹底解説

「不動産を売却したら、贈与税がかかるの?」 このような疑問をお持ちではないでしょうか。

通常、不動産を売った時にかかるのは「譲渡所得税(所得税・住民税)」ですが、特定の条件下では「贈与税」がかかるケースがあります。特に気をつけたいのが、親子や夫婦など**「親族間での売買」**です。

この記事では、不動産売却における贈与税の基本から、思わぬ税金が発生してしまう「みなし贈与」の仕組み、そして対策についてわかりやすく解説します。


1. そもそも「贈与税」とはどんな税金?

贈与税とは、個人から財産を**「無償(タダ)」でもらった時**にかかる税金です。 まずは基本の3つのポイントを押さえましょう。

  1. 誰が払う?: 財産を**もらった人(受贈者)**が払います。
  2. いくらから?: 1月1日から12月31日までの1年間に、110万円を超える財産をもらうと課税されます。
  3. 税率は?: 金額に応じて10%〜55%。相続税よりも税率が高く設定されています。

注意点 「売却(お金のやり取りがある)」なら贈与税は関係ないと思われがちですが、**「相場より著しく安く売った場合」**は贈与税の対象になることがあります。


2. 不動産売却で贈与税がかかる「みなし贈与」とは

不動産売却で最も注意すべきなのが**「低額譲渡(ていがくじょうと)」による「みなし贈与」**です。

「安く売る」=「差額をプレゼントした」とみなされる

本来3,000万円の価値がある土地を、子供だからといって1,000万円で売却したとします。 この場合、税務署は次のように判断します。

  • 時価: 3,000万円
  • 売買価格: 1,000万円
  • 差額: 2,000万円

この差額の2,000万円について、「親から子供へ2,000万円分の価値をプレゼントした」とみなされ、買った側(子供)に贈与税が課税されます。これを**「みなし贈与」**と呼びます。


3. 具体的なケーススタディ:こんな時は要注意

どのようなケースで贈与税のリスクがあるのか、具体例を見てみましょう。

ケース①:親子間での格安売買

「子供が家を建てる土地を探しているから、親の土地を相場の半額で譲ってあげた」 → 【危険】 半額分が贈与とみなされ、数百万円単位の贈与税がかかる可能性があります。

ケース②:夫婦共有名義の持分トラブル

「夫が全額資金を出して購入したマンションを、夫婦1/2ずつの共有名義で登記した」 → 【危険】 妻は一銭も出していないのに、不動産の半分をもらったことになります。妻の持分(1/2相当額)に対して贈与税がかかります。

ケース③:借金の肩代わりによる譲渡

「親のローン残債(借金)を子供が引き受ける代わりに、不動産の名義を子供に変えた」 → 【要確認】 不動産の価値がローン残債よりも明らかに高い場合、その差額が贈与とみなされることがあります(負担付贈与)。


4. 贈与税がかからないようにする対策

親族間で不動産を動かす際に、無駄な税金を払わないための対策は主に3つです。

① 適正価格(時価)で売買する

「みなし贈与」を避ける唯一の方法は、**第三者に売るのと同じくらいの価格(時価)**で売買することです。 ただし、不動産の「時価」の判断は難しいため、不動産鑑定士や不動産会社に査定を依頼し、根拠のある価格設定にする必要があります。

② 相続時精算課税制度を利用する

60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与の場合、2,500万円まで贈与税がかからない制度です。 これを使えば、生前に不動産を贈与しても当面の税金はかかりません(ただし、相続発生時に相続税として精算されます)。

③ 夫婦間の贈与特例(おしどり贈与)を使う

結婚して20年以上の夫婦であれば、居住用不動産(または購入資金)の贈与が最大2,000万円まで非課税になります。自宅の名義を変更したい場合に有効です。


まとめ:親族間の不動産売却は「価格設定」が命

不動産売却において、他人への売却なら贈与税を気にする必要はほとんどありません。しかし、**家族や親族への売却(名義変更)**をお考えの場合は、以下の点に注意してください。

  • 相場より安すぎる価格で売ると、買った側に贈与税がかかる(みなし贈与)。
  • 年間110万円の基礎控除を超えると申告が必要。
  • 特例制度を使えば、税金を抑えられる可能性がある。

親族間売買は、通常の不動産取引よりも税務リスクが高くなります。「安くしてあげたい」という親心が、逆に高額な税金を生むこともありますので、自己判断せずに専門家に相談することをおすすめします。

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